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〘302㌻〙

第1章

1 キリスト・イエスの僕しもべ、召めされて使󠄃徒しととなり、神かみの福音󠄃ふくいんのために選󠄄えらび別わかたれたるパウロ―― 2 この福音󠄃ふくいんは神かみその預言者よげんしゃたちにより、聖󠄃書せいしょの中うちに預あらかじめ御子みこに就つきて約やくし給たまひしものなり。 3 御子みこは肉󠄁にくによれば、ダビデの裔すゑより生うまれ、 4 潔󠄄きよき靈れいによれば、死人しにんの復活よみがへりにより大能たいのうをもて神かみの子こと定さだめられ給たまへり、即すなはち我われらの主しゅイエス・キリストなり。 5 我等われらその御名みなの爲ためにもろもろの國人くにびとを信仰しんかうに從順じゅうじゅんならしめんとて、彼かれより恩惠めぐみと使󠄃徒しとの職つとめとを受うけたり。 6 汝なんぢ等らもその中うちにありてイエス・キリストの有󠄃ものとならん爲ために召めされたるなり―― 7 われ書ふみをロマに在ありて神かみに愛あいせられ、召めされて聖󠄃徒せいととなりたる凡すべての者ものに贈おくる。願ねがはくは我われらの父󠄃ちちなる神かみおよび主しゅイエス・キリストより賜たまふ恩惠めぐみと平󠄃安へいあんと汝なんぢらに在あらんことを。

8 汝なんぢらの信仰しんかう、全󠄃世界ぜんせかいに言いひ傳つたへられたれば、我われまづ汝なんぢら一同いちどうの爲ためにイエス・キリストによりて我わが神かみに感謝󠄃かんしゃす。 9 その御子みこの福音󠄃ふくいんに於おいて我わが靈れいをもて事つかふる神かみは、わが絕たえず祈いのりのうちに汝なんぢらを覺おぼえ、 10 如何いかにしてか御意みこゝろに適󠄄かなひ、いつか汝なんぢらに到いたるべき途󠄃みちを得えんと、常つねに冀こひねがふことを我わがために證あかしし給たまふなり。 11 われ汝なんぢらを見みんことを切せつに望󠄇のぞむは、汝なんぢらの堅かたうせられん爲ために靈れいの賜物たまものを分󠄃わけ與あたへんとてなり。 12 即すなはち我われなんぢらの中うちにありて互たがひの信仰しんかうにより相あひ共ともに慰なぐさめられん爲ためなり。
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13 兄弟きゃうだいよ、我われほかの異邦󠄆人いはうじんの中うちより得えしごとく汝なんぢらの中うちよりも實みを得えんとて屡次󠄄しばしばなんぢらに往󠄃ゆかんとしたれど、今いまに至いたりてなほ妨さまたげらる、此この事ことを汝なんぢらの知しらざるを欲ほっせず。 14 我われはギリシヤ人びとにも夷人えびすにも智かしこき者ものにも愚おろかなる者ものにも負󠄅債おひめあり。 15 この故ゆゑに我われはロマに在ある汝なんぢらにも福音󠄃ふくいんを宣傳のべつたへんことを頻しきりに願ねがふなり。 16 我われは福音󠄃ふくいんを恥はぢとせず、この福音󠄃ふくいんはユダヤ人びとを始はじめギリシヤ人びとにも、凡すべて信しんずる者ものに救すくひを得えさする神かみの力ちからたればなり。 17 神かみの義ぎはその福音󠄃ふくいんのうちに顯あらはれ、信仰しんかうより出いでて信仰しんかうに進󠄃すゝましむ。錄しるして『義人ぎじんは信仰しんかうによりて生いくべし』とある如ごとし。

18 それ神かみの怒いかりは、不義ふぎをもて眞󠄃理まことを阻はばむ人ひとの、もろもろの不虔ふけんと不義ふぎとに對むかひて天てんより顯あらはる。 19 その故ゆゑは神かみにつきて知しり得うべきことは彼かれらに顯著あらはなればなり、神かみこれを顯あらはし給たまへり。 20 それ神かみの見みるべからざる永遠󠄄とこしへの能力ちからと神性しんせいとは造󠄃つくられたる物ものにより世よの創はじめより悟さとりえて明あきらかに見みるべければ、彼かれら言いひ遁󠄅のがるる術󠄃すべなし。〘220㌻〙 21 神かみを知しりつつも尙なほこれを神かみとして崇あがめず、感謝󠄃かんしゃせず、その念おもひは虛むなしく、その愚おろかなる心こゝろは暗󠄃くらくなれり。 22 自みづから智かしこしと稱󠄄となへて愚おろかとなり、 23 朽くつることなき神かみの榮光えいくわうを易かへて朽くつべき人ひとおよび禽獸とりけもの・匍はふ物ものに似にたる像󠄃かたちとなす。

24 この故ゆゑに神かみは彼かれらを其その心こゝろの慾よくにまかせて、互たがひにその身みを辱はづかしむる汚穢けがれに付わたし給たまへり。 25 彼かれらは神かみの眞󠄃まことを易かへて虛僞いつはりとなし、造󠄃物主つくりぬしを措おきて造󠄃つくられたる物ものを拜はいし、且かつこれに事つかふ、造󠄃物主つくりぬしは永遠󠄄とこしへに讃ほむべき者ものなり、アァメン。
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26 之これによりて神かみは彼かれらを恥はづべき慾よくに付わたし給たまへり。即すなはち女をんなは順性じゅんせいの用ようを易かへて逆󠄃性ぎゃくせいの用ようとなし、 27 男をとこもまた同おなじく女をんなの順性じゅんせいの用ようを棄すてて互たがひに情󠄃じゃう慾よくを熾もやし、男をとこと男をとこと恥はづることを行おこなひて、その迷󠄃まよひに値あたひすべき報むくいを己おのが身みに受うけたり。

28 また神かみを心こゝろに存とむるを善よしとせざれば、神かみもその邪󠄅曲よこしまなる心こゝろの隨まゝに爲すまじき事ことをするに任まかせ給たまへり。 29 即すなはちもろもろの不義ふぎ・惡あく・慳貪むさぼり・惡意あくいにて滿みつる者もの、また嫉妬ねたみ・殺意さつい・紛󠄃爭あらそひ・詭計たばかり・惡念あくねんの溢󠄃あふるる者もの、 30 讒言ざんげんする者もの・謗そしる者もの・神かみに憎にくまるる者もの・侮あなどる者もの・高たかぶる者もの・誇ほこる者もの・惡事あくじを企くはだつる者もの・父󠄃母ふぼに逆󠄃さからふ者もの、 31 無知むち・違󠄇約ゐやく・無情󠄃むじゃう・無む慈悲じひなる者ものにして、 32 斯かゝる事ことどもを行おこなふ者ものの死罪しざいに當あたるべき神かみの定さだめを知しりながら、啻たゞに自己みづからこれらの事ことを行おこなふのみならず、また人ひとの之これを行おこなふを可よしとせり。

第2章

1 然されば凡すべて人ひとを審さばく者ものよ、なんぢ言いひ遁󠄅のがるる術󠄃すべなし、他ほかの人ひとを審さばくは、正まさしく己おのれを罪つみするなり。人ひとをさばく汝なんぢもみづから同おなじ事ことを行おこなへばなり。 2 斯かゝる事ことをおこなふ者ものを罪つみする神かみの審判󠄄さばきは眞󠄃理まことに合かなへりと我われらは知しる。 3 斯かゝる事ことをおこなふ者ものを審さばきて自己みづからこれを行おこなふ人ひとよ、なんぢ神かみの審判󠄄さばきを遁󠄅のがれんと思おもふか。 4 神かみの仁慈なさけなんぢを悔改くいあらために導󠄃みちびくを知しらずして、その仁慈なさけと忍󠄄耐にんたいと寛容くわんようとの豐ゆたかなるを輕かろんずるか。 5 なんぢ頑󠄂固かたくなと悔改くいあらためぬ心こゝろとにより己おのれのために神かみの怒いかりを積つみて、その正たゞしき審判󠄄さばきの顯あらはるる怒いかりの日ひに及およぶなり。 6 神かみはおのおのの所󠄃作しわざに隨したがひて報むくい、 7 耐たへ忍󠄄しのびて善ぜんをおこない光榮くわうえいと尊󠄅貴たふときと朽くちざる事こととを求もとむる者ものには永遠󠄄とこしへの生命いのちをもて報むくい、
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8 徒黨とたうにより眞󠄃理まことに從したがはずして不義ふぎにしたがう者ものには怒いかりと憤恚いきどほりとをもて報むくい給たまはん。 9 すべて惡あくをおこなふ人ひとには、ユダヤ人びとを始はじめギリシヤ人びとにも患難なやみと苦難くるしみとあり。〘221㌻〙 10 凡すべて善ぜんをおこなふ人ひとには、ユダヤ人びとを始はじめギリシヤ人びとにも光榮くわうえいと尊󠄅貴たふときと平󠄃安へいあんとあらん。 11 そは神かみには偏󠄃かたより視み給たまふこと無なければなり。 12 凡おほよそ律法おきてなくして罪つみを犯をかしたる者ものは律法おきてなくして滅ほろび、律法おきてありて罪つみを犯をかしたる者ものは律法おきてによりて審さばかるべし。 13 律法おきてを聞きくもの神かみの前󠄃まへに義ぎたるにあらず、律法おきてをおこなふ者もののみ義ぎとせらるべし。―― 14 律法おきてを有󠄃もたぬ異邦󠄆人いはうじん、もし本性うまれつきのまま律法おきてに載のせたる所󠄃ところをおこなふ時ときは、律法おきてを有󠄃もたずとも自おのづから己おのが律法おきてたるなり。 15 即すなはち律法おきての命めいずる所󠄃ところのその心こゝろに錄しるされたるを顯あらはし、おのが良心りゃうしんもこれを證あかしをなして、その念おもひ、たがひに或あるひは訴うったへ或あるひは辯明べんめいす―― 16 是これわが福音󠄃ふくいんに云いへる如ごとく神かみのキリスト・イエスによりて人々ひとびとの隱かくれたる事ことを審さばきたまふ日ひに成󠄃なるべし。

17 汝なんぢユダヤ人びとと稱󠄄となへられ、律法おきてに安やすんじ、神かみを誇ほこり、 18 その御意みこゝろを知しり律法おきてに敎をしへられて善惡よしあしを辨わきまへ、 19 また律法おきてのうちに知識ちしきと眞󠄃理しんりとの式かたを有󠄃もてりとして盲人めしひの手引てびき、暗󠄃黑くらきにをる者ものの光明ひかり、 20 愚おろかなる者ものの守役もりやく、幼兒をさなごの敎師けうしなりと自みづから信しんずる者ものよ、 21 何なにゆゑ人ひとに敎をしへて己おのれを敎をしへぬか、竊ぬすむ勿なかれと宣のべて自みづから竊ぬすむか、 22 姦淫かんいんする勿なかれと言いひて姦淫かんいんするか、偶像󠄃ぐうざうを惡にくみて宮みやの物ものを奪うばふか、 23 律法おきてに誇ほこりて律法おきてを破やぶり神かみを輕かろんずるか。 24 錄しるして『神かみの名なは汝なんぢらの故ゆゑによりて異邦󠄆人いはうじんの中なかに瀆けがさる』とあるが如ごとし。 25 なんぢ律法おきてを守まもらば割󠄅禮かつれいは益えきあり、律法おきてを破やぶらば汝なんぢの割󠄅禮かつれいは無む割󠄅禮かつれいとなるなり。 26 割󠄅禮かつれいなき者ものも律法おきての義ぎを守まもらば、その無む割󠄅禮かつれいは割󠄅禮かつれいとせらるるにあらずや。
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27 本性うまれつきのまま割󠄅禮かつれいなくして律法おきてを全󠄃まったうする者ものは、儀文󠄃ぎぶんと割󠄅禮かつれいとありてなほ律法おきてをやぶる汝なんぢを審さばかん。 28 それ表面うはべのユダヤ人びとはユダヤ人びとたるにあらず、肉󠄁にくに在ある表面うはべの割󠄅禮かつれいは割󠄅禮かつれいたるにあらず。 29 隱ひそかなるユダヤ人びとはユダヤ人びとなり、儀文󠄃ぎぶんによらず、靈れいによる心こゝろの割󠄅禮かつれいは割󠄅禮かつれいなり、その譽ほまれは人ひとよりにあらず神かみより來きたるなり。

第3章

1 然さらばユダヤ人びとに何なにの優すぐるる所󠄃ところありや、また割󠄅禮かつれいに何なにの益えきありや。 2 凡すべての事ことに益えきおほし、先まづ第一だいいちに彼かれらは神かみの言ことばを委ゆだねられたり。 3 されど如何いかん、ここに信しんぜざる者ものありとも、その不ふ信しんは神かみの眞󠄃實しんじつを廢すつべきか。 4 決けっして然しからず、人ひとをみな虛僞いつはり者ものとすとも神かみを誠󠄃實まこととすべし。錄しるして 『なんぢは其その言ことばにて義ぎとせられ、 審さばかるるとき勝󠄃かちを得給えたまはん爲ためなり』とあるが如ごとし。〘222㌻〙 5 然されど若もし我われらの不義ふぎは神かみの義ぎを顯あらはすとせば何なにと言いはんか、怒いかりを加くはへたまふ神かみは不義ふぎなるか(こは人ひとの言いふごとく言いふなり) 6 決けっして然しからず、若もし然しかあらば神かみは如何いかにして世よを審さばき給たまふべき。 7 わが虛僞いつはりによりて神かみの誠󠄃實まこといよいよ顯あらはれ、その榮光えいくわうとならんには、爭いかで我われなほ罪人つみびととして審さばかるる事ことあらん。 8 また『善ぜんを來きたらせん爲ために惡あくをなすは可よからずや』(或ある者ものわれらを譏󠄃そしりて之これを我われらの言ことばなりといふ)斯かゝる人ひとの罪つみに定さだめらるるは正たゞし。

9 さらば如何いかん、我われらの勝󠄃まさる所󠄃ところありや、有󠄃あることなし。我われら旣󠄁すでにユダヤ人びともギリシヤ人びともみな罪つみの下したに在ありと吿つげたり。 10 錄しるして 『義人ぎじんなし、一人ひとりだになし、 11 聰さとき者ものなく、 神かみを求もとむる者ものなし。 12 みな迷󠄃まよひて相あひ共ともに空󠄃むなしくなれり、 善ぜんをなす者ものなし、一人ひとりだになし。 13 彼かれらの咽のどは開ひらきたる墓はかなり、 舌したには詭計たばかりあり、 口唇くちびるのうちには蝮まむしの毒󠄂どくあり、
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14 その口くちは詛のろひと苦にがきとにて滿みつ。 15 その足あしは血ちを流ながすに速󠄃はやし、 16 破壞やぶれと艱難なやみとその道󠄃みちにあり、 17 彼かれらは平󠄃和へいわの道󠄃みちを知しらず。 18 その眼前󠄃めのまへに神かみをおそるる畏おそれなし』とあるが如ごとし。

19 それ律法おきての言いふところは律法おきての下したにある者ものに語かたると我われらは知しる、これは凡すべての口くちふさがり、神かみの審判󠄄さばきに全󠄃世界ぜんせかいの服󠄃ふくせん爲ためなり。 20 律法おきての行爲おこなひによりては、一人ひとりだに神かみのまへに義ぎとせられず、律法おきてによりて罪つみは知しらるるなり。

21 然しかるに今いまや律法おきての外ほかに神かみの義ぎは顯あらはれたり、これ律法おきてと預言者よげんしゃとに由よりて證あかしせられ、 22 イエス・キリストを信しんずるに由よりて凡すべて信しんずる者ものに與あたへたまふ神かみの義ぎなり。之これには何なに等らの差別さべつあるなし。 23 凡すべての人ひと、罪つみを犯をかしたれば神かみの榮光えいくわうを受うくるに足たらず、 24 功いさおなくして神かみの恩惠めぐみにより、キリスト・イエスにある贖罪あがなひによりて義ぎとせらるるなり。 25 即すなはち神かみは忍󠄄耐にんたいをもて過󠄃來すぎこしかたの罪つみを見遁󠄅みのがし給たまひしが、己おのれの義ぎを顯あらはさんとて、キリストを立たて、その血ちによりて信仰しんかうによれる宥なだめの供物そなへものとなし給たまへり。 26 これ今いまおのれの義ぎを顯あらはして、自みづから義ぎたらん爲ため、またイエスを信しんずる者ものを義ぎとし給たまはん爲ためなり。〘223㌻〙 27 然さらば誇ほこるところ何處いづこにあるか。旣󠄁すでに除のぞかれたり、何なにの律法おきてに由よりてか、行爲おこなひの律法おきてか、然しからず、信仰しんかうの律法おきてに由よりてなり。 28 我われらは思おもふ、人ひとの義ぎとせらるるは、律法おきての行爲おこなひによらず、信仰しんかうに由よるなり。 29 神かみはただユダヤ人びとのみの神かみなるか、また異邦󠄆人いはうじんの神かみならずや、然しかり、また異邦󠄆人いはうじんの神かみなり。 30 神かみは唯一ゆゐいつにして割󠄅禮かつれいある者ものを信仰しんかうによりて義ぎとし、割󠄅禮かつれいなき者ものをも信仰しんかうによりて義ぎとし給たまへばなり。 31 然さらば我われら信仰しんかうをもて律法おきてを空󠄃むなしくするか、決けっして然しからず、反かへつて律法おきてを堅かたうするなり。
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第4章

1 然さらば[*]我われらの先祖せんぞアブラハムは肉󠄁にくにつきて何なにを得えたりと言いはんか。[*或は「肉󠄁によれる我らの先祖アブラハム何を……」と譯す。] 2 アブラハム若もし行爲おこなひによりて義ぎとせられたらんには誇ほこるべき所󠄃ところあり、然されど神かみの前󠄃まへには有󠄃あることなし。 3 聖󠄃書せいしょに何なにと云いへるか『アブラハム神かみを信しんず、その信仰しんかうを義ぎと認󠄃みとめられたり』と。 4 それ働はたらく者ものへの報酬むくいは恩惠めぐみといはず、負󠄅債おひめと認󠄃みとめらる。 5 されど働はたらく事ことなくとも、敬虔けいけんならぬ者ものを義ぎとしたまふ神かみを信しんずる者ものは、その信仰しんかうを義ぎと認󠄃みとめらるるなり。 6 ダビデもまた行爲おこなひなくして神かみに義ぎと認󠄃みとめらるる人ひとの幸福さいはひにつきて斯かく云いへり。曰いはく、 7 『不法ふほふを免ゆるされ、 罪つみを蔽おほはれたる者ものは幸福さいはひなるかな、 8 主しゅが罪つみを認󠄃みとめ給たまはぬ人ひとは幸福さいはひなるかな』 9 然されば此この幸福さいはひはただ割󠄅禮かつれいある者ものにのみあるか、また割󠄅禮かつれいなき者ものにもあるか、我われらは言いふ『アブラハムはその信仰しんかうを義ぎと認󠄃みとめられたり』と。 10 如何いかなるときに義ぎと認󠄃みとめられたるか、割󠄅禮かつれいののちか、無む割󠄅禮かつれいのときか、割󠄅禮かつれいの後のちならず、無む割󠄅禮かつれいの時ときなり。 11 而しかして無む割󠄅禮かつれいのときの信仰しんかうによれる義ぎの印いんとして割󠄅禮かつれいの徽しるしを受うけたり、これ無む割󠄅禮かつれいにして信しんずる凡すべての者ものの義ぎと認󠄃みとめられん爲ために、その父󠄃ちちとなり、 12 また割󠄅禮かつれいのみに由よらず、我われらの父󠄃ちちアブラハムの無む割󠄅禮かつれいのときの信仰しんかうの跡あとをふむ割󠄅禮かつれいある者ものの父󠄃ちちとならん爲ためなり。 13 アブラハム世界せかいの世嗣よつぎたるべしとの約束やくそくを、アブラハムとその裔すゑとの與あたへられしは、律法おきてに由よらず、信仰しんかうの義ぎに由よれるなり。 14 もし律法おきてによる者ものども世嗣よつぎたらば、信仰しんかうは空󠄃むなしく約束やくそくは廢すたるなり。 15 それ律法おきては怒いかりを招まねく、律法おきてなき所󠄃ところには罪つみを犯をかすこともなし。 16 この故ゆゑに世嗣よつぎたることの恩惠めぐみに干あづからんために信仰しんかうに由よるなり、是これかの約束やくそくのアブラハムの凡すべての裔すゑ、すなはち律法おきてによる裔すゑのみならず、彼かれの信仰しんかうに效ならふ裔すゑにも堅かたうせられん爲ためなり。
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17 彼かれはその信しんじたる所󠄃ところの神かみ、すなはち死人しにんを活いかし、無なきものを有󠄃あるものの如ごとく呼よびたまふ神かみの前󠄃まへにて我等われらすべての者ものの父󠄃ちちたるなり。錄しるして『われ汝なんぢを立たてて多おほくの國人くにびとの父󠄃ちちとせり』とあるが如ごとし。〘224㌻〙 18 彼かれは望󠄇のぞむべくもあらぬ時ときになほ望󠄇のぞみて信しんじたり、是これなんぢの裔すゑは斯かくの如ごとくなるべしと言いひ給たまひしに隨したがひて多おほくの國人くにびとの父󠄃ちちとならん爲ためなりき。 19 斯かくて凡おほよそ百歳ひゃくさいに及およびて己おのが身みの死しにたるがごとき狀さまなると、サラの胎たいの死しにたるが如ごときとを認󠄃みとむれども、その信仰しんかうよわらず、 20 不ふ信しんをもて神かみの約束やくそくを疑うたがはず、信仰しんかうにより强つよくなりて神かみに榮光えいくわうを歸きし、 21 その約やくし給たまへることを成󠄃なし得給えたまふと確信かくしんせり。 22 之これに由よりて其その信仰しんかうを義ぎと認󠄃みとめられたり。 23 斯かく『義ぎと認󠄃みとめられたり』と錄しるしたるは、アブラハムの爲ためのみならず、また我われらの爲ためなり。 24 我われらの主しゅイエスを死人しにんの中うちより甦よみがへらせ給たまひし者ものを信しんずる我われらも、その信仰しんかうを義ぎと認󠄃みとめられん。 25 主しゅは我われらの罪つみのために付わたされ、我われらの義ぎとせられん爲ために甦よみがへらせられ給たまへるなり。

第5章

1 斯かく我われら信仰しんかうによりて義ぎとせられたれば、我われらの主しゅイエス・キリストに賴より、神かみに對たいして平󠄃和へいわを得えたり。 2 また彼かれにより信仰しんかうによりて今いま、立たつところの恩惠めぐみに入いることを得え、神かみの榮光えいくわうを望󠄇のぞみて喜よろこぶなり。 3 然しかのみならず患難なやみをも喜よろこぶ、そは患難なやみは忍󠄄耐にんたいを生しゃうじ、 4 忍󠄄耐にんたいは練達󠄃れんたつを生しゃうじ、練達󠄃れんたつは希望󠄇きばうを生しゃうずと知しればなり。 5 希望󠄇きばうは恥はぢを來きたらせず、我われらに賜たまひたる聖󠄃せい靈れいによりて神かみの愛あい、われらの心こゝろに注そゝげばなり。 6 我等われらのなほ弱󠄃よわかりし時とき、キリスト定さだまりたる日ひに及およびて敬虔けいけんならぬ者もののために死しに給たまへり。 7 それ義人ぎじんのために死しぬるもの殆ほとんどなし、仁者じんしゃのためには死しぬることを厭いとはぬ者ものもやあらん。
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8 然されど我等われらがなほ罪人つみびとたりし時とき、キリスト我等われらのために死しに給たまひしに由よりて、神かみは我われらに對たいする愛あいをあらはし給たまへり。 9 斯かく今いまその血ちに賴よりて我われら義ぎとせられたらんには、况まして彼かれによりて怒いかりより救すくはれざらんや。 10 我等われらもし敵てきたりしとき御子みこの死しに賴よりて神かみと和やはらぐことを得えたらんには、况まして和やはらぎて後のちその生命いのちによりて救すくはれざらんや。 11 然しかのみならず今いまわれらに和睦やはらぎを得えさせ給たまへる我われらの主しゅイエス・キリストに賴よりて神かみを喜よろこぶなり。

12 それ一人ひとりの人ひとによりて罪つみは世よに入いり、また罪つみによりて死しは世よに入いり、凡すべての人ひと、罪つみを犯をかしし故ゆゑに死しは凡すべての人ひとに及およべり。〘225㌻〙 13 律法おきてのきたる前󠄃さきにも罪つみは世よにありき、然されど律法おきてなくば罪つみは認󠄃みとめらるること無なし。 14 然しかるにアダムよりモーセに至いたるまで、アダムの咎とがと等ひとしき罪つみを犯をかさぬ者ものの上うへにも死しは王わうたりき。アダムは來きたらんとする者ものの型かたなり。 15 然されど恩惠めぐみの賜物たまものは、かの咎とがの如ごときにあらず、一人ひとりの咎とがによりて多おほくの人ひとの死しにたらんには、况まして神かみの恩惠めぐみと一人ひとりの人ひとイエス・キリストによる恩惠めぐみの賜物たまものとは、多おほくの人ひとに溢󠄃あふれざらんや。 16 又󠄂またこの賜物たまものは罪つみを犯をかしし一人ひとりより來きたれるものの如ごときにあらず、審判󠄄さばきは一人ひとりよりして罪つみを定さだむるに至いたりしが、恩惠めぐみの賜物たまものは多おほくの咎とがよりして義ぎとするに至いたるなり。 17 もし一人ひとりの咎とがのために一人ひとりによりて死しは王わうとなりたらんには、况まして恩惠めぐみと義ぎの賜物たまものとを豐ゆたかに受うくる者ものは一人ひとりのイエス・キリストにより生命いのちに在ありて王わうたらざらんや。 18 されば一ひとつの咎とがによりて罪つみを定さだむることの凡すべての人ひとに及およびしごとく、一ひとつの正たゞしき行爲おこなひによりて義ぎとせられ、生命いのちを得うるに至いたることも凡すべての人ひとに及およべり。
 310㌻ 
19 それは一人ひとりの不ふ從順じゅうじゅんによりて多おほくの人ひとの罪人つみびととせられし如ごとく、一人ひとりの從順じゅうじゅんによりて多おほくの人ひと、義人ぎじんとせらるるなり。 20 律法おきての來きたりしは咎とがの增まさんためなり。然されど罪つみの增ますところには恩惠めぐみも彌增いやませり。 21 これ罪つみの死しによりて王わうたりし如ごとく、恩惠めぐみも義ぎによりて王わうとなり、我われらの主しゅイエス・キリストに由よりて永遠󠄄とこしへの生命いのちに至いたらん爲ためなり。

第6章

1 されば何なにをか言いはん、恩惠めぐみの增まさんために罪つみのうちに止とゞまるべきか、 2 決けっして然しからず、罪つみに就つきて死しにたる我われらは爭いかで尙なほその中うちに生いきんや。 3 なんぢら知しらぬか、凡おほよそキリスト・イエスに合あふバプテスマを受うけたる我われらは、その死しに合あふバプテスマを受うけしを。 4 我われらはバプテスマによりて彼かれとともに葬はうむられ、その死しに合あはせられたり。これキリスト父󠄃ちちの榮光えいくわうによりて死人しにんの中うちより甦よみがへらせられ給たまひしごとく、我われらも新あたらしき生命いのちに步あゆまんためなり。 5 我われらキリストに接つがれて、その死しの狀さまにひとしくば、その復活よみがへりにも等ひとしかるべし。 6 我われらは知しる、われらの舊ふるき人ひと、キリストと共ともに十字架じふじかにつけられたるは、罪つみの體からだほろびて、此こののち罪つみに事つかへざらん爲ためなるを。 7 そは死しにし者ものは罪つみより脫のがるるなり。 8 我等われらもしキリストと共ともに死しにしならば、また彼かれとともに活いきんことを信しんず。 9 キリスト死人しにんの中うちより甦よみがへりて復また死しに給たまはず、死しもまた彼かれに主しゅとならぬを我われら知しればなり。 10 その死しに給たまへるは罪つみにつきて一ひとたび死しに給たまへるにて、その活いき給たまへるは神かみにつきて活いき給たまへるなり。〘226㌻〙 11 斯かくのごとく汝なんぢらも己おのれを罪つみにつきては死しにたるもの、神かみにつきては、キリスト・イエスに在ありて活いきたる者ものと思おもふべし。
 311㌻ 

12 然されば罪つみを汝なんぢらの死しぬべき體からだに王わうたらしめて其その慾よくに從したがふことなく、 13 汝なんぢらの肢體したいを罪つみに獻さゝげて不義ふぎの[*]器うつはとなさず、反かへつて死人しにんの中うちより活いき返󠄄かへりたる者もののごとく己おのれを神かみにささげ、その肢體したいを義ぎの器うつはとして神かみに獻さゝげよ。[*或は「武器」と譯す。] 14 汝なんぢらは律法おきての下したにあらずして恩惠めぐみの下したにあれば、罪つみは汝なんぢらに主しゅとなる事ことなきなり。

15 然さらば如何いかに、我われらは律法おきての下したにあらず、恩惠めぐみの下したにあるが故ゆゑに罪つみを犯をかすべきか、決けっして然しからず。 16 なんぢら知しらぬか、己おのれを獻さゝげ僕しもべとなりて、誰たれに從したがふとも其その僕しもべたることを。或あるひは罪つみの僕しもべとなりて死しに至いたり、或あるひは從順じゅうじゅんの僕しもべとなりて義ぎにいたる。 17 然されど神かみに感謝󠄃かんしゃす、汝なんぢ等らはもと罪つみの僕しもべなりしが、傳つたへられし敎をしへの範のりに心こゝろより從したがひ、 18 罪つみより解放ときはなされて義ぎの僕しもべとなりたり。 19 斯かく人ひとの事ことをかりて言いふは、汝なんぢらの肉󠄁にくよわき故ゆゑなり。なんぢら舊もとその肢體したいをささげ、穢けがれと不法ふほふとの僕しもべとなりて不法ふほふに到いたりしごとく、今いまその肢體したいをささげ、義ぎの僕しもべとなりて潔󠄄きよきに到いたれ。 20 なんぢら罪つみの僕しもべたりしときは義ぎに對たいして自由じいうなりき。 21 その時ときに今いまは恥はぢとする所󠄃ところの事ことによりて何なにの實みを得えしか、これらの事ことの極はては死しなり。 22 然されど今いまは罪つみより解放ときはなされて神かみの僕しもべとなりたれば、潔󠄄きよきにいたる實みを得えたり、その極はては永遠󠄄とこしへの生命いのちなり。 23 それ罪つみの拂はらふ價あたひは死しなり、然されど神かみの賜物たまものは我われらの主しゅキリスト・イエスにありて受うくる永遠󠄄とこしへの生命いのちなり。

第7章

1 兄弟きゃうだいよ、なんぢら知しらぬか、(われ律法おきてを知しる者ものに語かたる)律法おきては人ひとの生いける間あひだのみ、之これに主しゅたるなり。
 312㌻ 
2 夫をっとある婦󠄃をんなは律法おきてによりて夫をっとの生いける中うちは之これに縛󠄃しばらる。然されど夫をっと死しなば夫をっとの律法おきてより解とかるるなり。 3 然されば夫をっとの生いける中うちに他ほかの人ひとに適󠄄ゆかば淫婦󠄃いんぷと稱󠄄となへらるれど、夫をっと死しなば、その律法おきてより解放ときはなさるる故ゆゑに他ほかの人ひとに適󠄄ゆくとも淫婦󠄃いんぷとはならぬなり。 4 わが兄弟きゃうだいよ、斯かくのごとく汝なんぢ等らもキリストの體からだにより律法おきてに就つきて死しにたり。これ他ほかの者もの、即すなはち死人しにんの中うちより甦よみがへらせられ給たまひし者ものに適󠄄ゆき、神かみのために實みを結むすばん爲ためなり。 5 われら肉󠄁にくに在ありしとき、律法おきてに由よれる罪つみの情󠄃じゃうは我われらの肢體したいのうちに働はたらきて、死しのために實みを結むすばせたり。〘227㌻〙 6 然されど縛󠄃しばられたる所󠄃ところに就つきて我等われらいま死しにて律法おきてより解とかれたれば、儀文󠄃ぎぶんの舊ふるきによらず、靈れいの新あたらしきに從したがひて事つかふることを得うるなり。

7 然さらば何なにをか言いはん、律法おきては罪つみなるか、決けっして然しからず、律法おきてに由よらでは、われ罪つみを知しらず、律法おきてに『貪むさぼる勿なかれ』と言いはずば、慳貪むさぼりを知しらざりき。 8 然されど罪つみは機をりに乘じょうじ誡命いましめによりて各樣さまざまの慳貪むさぼりを我わがうちに起󠄃おこせり、律法おきてなくば罪つみは死しにたるものなり。 9 われ曾かつて律法おきてなくして生いきたれど、誡命いましめきたりし時ときに罪つみは生いき、我われは死しにたり。 10 而しかして我われは生命いのちにいたるべき誡命いましめの反かへつて死しに到いたらしむるを見出みいだせり。 11 これ罪つみは機をりに乘じょうじ誡命いましめによりて我われを欺あざむき、かつ之これによりて我われを殺ころせり。 12 それ律法おきては聖󠄃せいなり、誡命いましめもまた聖󠄃せいにして正たゞしく、かつ善ぜんなり。 13 然されば善ぜんなるもの我われに死しとなりたるか。決けっして然しからず、罪つみは罪つみたることの現あらはれんために善ぜんなる者ものによりて我わが內うちに死しを來きたらせたるなり。これ誡命いましめによりて罪つみの甚はなはだしき惡あくとならん爲ためなり。 14 われら律法おきては靈れいなるものと知しる、されど我われは肉󠄁にくなる者ものにて罪つみの下したに賣うられたり。 15 わが行おこなふことは我われしらず、我わが欲ほっする所󠄃ところは之これをなさず、反かへつて我わが憎にくむところは之これを爲なすなり。
 313㌻ 
16 わが欲ほっせぬ所󠄃ところを爲なすときは律法おきての善ぜんなるを認󠄃みとむ。 17 然されば之これを行おこなふは我われにあらず、我わが中うちに宿やどる罪つみなり。 18 我われはわが中うち、すなわち我わが肉󠄁にくのうちに善ぜんの宿やどらぬを知しる、善ぜんを欲ほっすること我われにあれど、之これを行おこなふ事ことなければなり。 19 わが欲ほっする所󠄃ところの善ぜんは之これをなさず、反かへつて欲ほっせぬ所󠄃ところの惡あくは之これをなすなり。 20 我われもし欲ほっせぬ所󠄃ところの事ことをなさば、之これを行おこなふは我われにあらず、我わが中うちに宿やどる罪つみなり。 21 然されば善ぜんをなさんと欲ほっする我われに惡あくありとの法のりを、われ見出みいだせり。 22 われ中うちなる人ひとにては神かみの律法おきてを悅よろこべど、 23 わが肢體したいのうちに他ほかの法のりありて、我わが心こゝろの法のりと戰たゝかひ、我われを肢體したいの中うちにある罪つみの法のりの下したに虜とりことするを見みる。 24 噫あゝわれ惱なやめる人ひとなるかな、此この死しの體からだより我われを救すくはん者ものは誰たれぞ。 25 我われらの主しゅイエス・キリストに賴よりて神かみに感謝󠄃かんしゃす、然されば我われみづから心こゝろにては神かみの律法おきてにつかへ、內うちにては罪つみの法のりに事つかふるなり。

第8章

1 この故ゆゑに今いまやキリスト・イエスに在ある者ものは罪つみに定さだめらるることなし。 2 キリスト・イエスに在ある生命いのちの御靈みたまの法のりは、なんぢを罪つみと死しとの法のりより解放ときはなしたればなり。 3 肉󠄁にくによりて弱󠄃よわくなれる律法おきての成󠄃なし能あたはぬ所󠄃ところを神かみは爲なし給たまへり、即すなはち己おのれの子こを罪つみある肉󠄁にくの形かたちにて罪つみのために遣󠄃つかはし、肉󠄁にくに於おいて罪つみを定さだめたまへり。〘228㌻〙 4 これ肉󠄁にくに從したがはず、靈れいに從したがひて步あゆむ我われらの中うちに律法おきての義ぎの完まったうせられん爲ためなり。 5 肉󠄁にくにしたがふ者ものは肉󠄁にくの事ことをおもひ、靈れいにしたがふ者ものは靈れいの事ことをおもふ。 6 肉󠄁にくの念おもひは死しなり、靈れいの念おもひは生命いのちなり、平󠄃安へいあんなり。 7 肉󠄁にくの念おもひは神かみに逆󠄃さからふ、それは神かみの律法おきてに服󠄃したがはず、否いなしたがふこと能あたはず、 8 また肉󠄁にくに居をる者ものは神かみを悅よろこばすこと能あたはざるなり。 9 然されど神かみの御靈みたまなんぢらの中うちに宿やどり給たまはば、汝なんぢらは肉󠄁にくに居をらで靈れいに居をらん、キリストの御靈みたまなき者ものはキリストに屬ぞくする者ものにあらず。
 314㌻ 
10 若もしキリスト汝なんぢらに在いまさば體からだは罪つみによりて死しにたる者ものなれど靈れいは義ぎによりて生命いのちに在あらん。 11 若もしイエスを死人しにんの中うちより甦よみがへらせ給たまひし者ものの御靈みたまなんぢらの中うちに宿やどり給たまはば、キリスト・イエスを死人しにんの中うちより甦よみがへらせ給たまひし者ものは、汝なんぢらの中うちに宿やどりたまふ御靈みたまによりて汝なんぢらの死しぬべき體からだをも活いかし給たまはん。

12 されば兄弟きゃうだいよ、われらは負󠄅債おひめあれど、肉󠄁にくに負󠄅おふ者ものならねば、肉󠄁にくに從したがひて活いくべきにあらず。 13 汝なんぢ等らもし肉󠄁にくに從したがひて活いきなば、死しなん。もし靈れいによりて體からだの行爲おこなひを殺ころさば活いくべし。 14 すべて神かみの御靈みたまに導󠄃みちびかるる者ものは、これ神かみの子こなり。 15 汝なんぢらは再ふたゝび懼おそれを懷いだくために僕しもべたる靈れいを受うけしにあらず、子ことせられたる者ものの靈れいを受うけたり、之これによりて我われらはアバ父󠄃ちちと呼よぶなり。 16 御靈みたまみづから我われらの靈れいとともに我われらが神かみの子こたることを證あかしす。 17 もし子こたらば世嗣よつぎたらん、神かみの嗣子よつぎにしてキリストと共ともに世嗣よつぎたるなり。これはキリストとともに榮光えいくわうを受うけん爲ために、その苦難くるしみをも共ともに受うくるに因よる。

18 われ思おもうに、今いまの時ときの苦難くるしみは、われらの上うへに顯あらはれんとする榮光えいくわうにくらぶるに足たらず。 19 それ造󠄃つくられたる者ものは切せつに慕したひて神かみの子こたちの現あらはれんことを待まつ。 20 造󠄃つくられたるものの虛無むなしきに服󠄃ふくせしは、己おのが願ねがひによるにあらず、服󠄃ふくせしめ給たまひし者ものによるなり。 21 然されどなほ造󠄃つくられたる者ものにも滅亡ほろびの僕しもべたる狀さまより解とかれて、神かみの子こたちの光榮くわうえいの自由じいうに入いる望󠄇のぞみは存のこれり。 22 我われらは知しる、すべて造󠄃つくられたるものの今いまに至いたるまで共ともに嘆なげき、ともに苦くるしむことを。
 315㌻ 
23 然しかのみならず、御靈みたまの初はじめの實みをもつ我われらも自みづから心こゝろのうちに嘆なげきて子ことせられんこと、即すなはちおのが體からだの贖あがなはれんことを待まつなり。 24 我われらは望󠄇のぞみによりて救すくはれたり、眼めに見みゆる望󠄇のぞみは望󠄇のぞみにあらず、人ひとその見みるところを爭いかでなほ望󠄇のぞまんや。 25 我等われらもし其その見みぬところを望󠄇のぞまば、忍󠄄耐にんたいをもて之これを待またん。〘229㌻〙

26 斯かくのごとく御靈みたまも我われらの弱󠄃よわきを助たすけたまふ。我われらは如何いかに祈いのるべきかを知しらざれども、御靈みたまみづから言いひ難かたき歎なげきをもて執成󠄃とりなし給たまふ。 27 また人ひとの心こゝろを極きはめたまふ者ものは御靈みたまの念おもひをも知しりたまふ。御靈みたまは神かみの御意みこゝろに適󠄄かなひて聖󠄃徒せいとのために執成󠄃とりなし給たまへばなり。 28 神かみを愛あいする者もの、すなはち御旨みむねによりて召めされたる者ものの爲ためには、凡すべてのこと相あひ働はたらきて益えきとなるを我われらは知しる。 29 神かみは預あらかじめ知しりたまふ者ものを御子みこの像󠄃かたちに象かたどらせんと預あらかじめ定さだめ給たまへり。これ多おほくの兄弟きゃうだいのうちに、御子みこを嫡子ちゃくしたらせんが爲ためなり。 30 又󠄂またその預あらかじめ定さだめたる者ものを召めし、召めしたる者ものを義ぎとし、義ぎとしたる者ものには光榮くわうえいを得えさせ給たまふ。

31 然されば此これ等らの事ことにつきて何なにをか言いはん、神かみもし我われらの味方みかたならば、誰たれか我われらに敵てきせんや。 32 己おのれの御子みこを惜をしまずして我われら衆すべてのために付わたし給たまひし者ものは、などか之これにそへて萬物ばんもつを我われらに賜たまはざらんや。 33 誰たれか神かみの選󠄄えらび給たまへる者ものを訴うったへん、神かみは之これを義ぎとし給たまふ。 34 誰たれか之これを罪つみに定さだめん、死しにて甦よみがへり給たまひしキリスト・イエスは神かみの右みぎに在いまして、我われらの爲ために執成󠄃とりなし給たまふなり。 35 我等われらをキリストの愛あいより離はなれしむる者ものは誰たれぞ、患難なやみか、苦難くるしみか、迫󠄃害󠄅はくがいか、飢󠄄うゑか、裸はだかか、危險あやふきか、劍つるぎか。
 316㌻ 
36 錄しるして 『汝なんぢのために我われらは、終󠄃日ひねもす、殺ころされて 屠󠄃ほふらるべき羊ひつじの如ごときものと爲せられたり』とあるが如ごとし。 37 然されど凡すべてこれらの事ことの中うちにありても、我われらを愛あいしたまふ者ものに賴より、勝󠄃かち得えて餘あまりあり。 38 われ確かたく信しんず、死しも生命いのちも、御使󠄃みつかひも、權威󠄂けんゐある者ものも、今いまある者ものも後のちあらん者ものも、力ちからある者ものも、 39 高たかきも深ふかきも、此この他ほかの造󠄃つくられたるものも、我われらの主しゅキリスト・イエスにある神かみの愛あいより、我われらを離はなれしむるを得えざることを。

第9章

1 我われキリストに在ありて眞󠄃まことをいひ虛僞いつはりを言いはず、 2 我われに大おほいなる憂うれひあることと心こゝろに絕たえざる痛いたみあることとを我わが良心りゃうしんも聖󠄃せい靈れいによりて證あかしす。 3 もし我わが兄弟きゃうだいわが骨肉󠄁こつにくの爲ためにならんには、我われみづから詛のろはれてキリストに棄すてらるるも亦またねがふ所󠄃ところなり。 4 彼かれ等らはイスラエル人びとにして、彼かれらには神かみの子ことせられたることと、榮光えいくわうと、もろもろの契󠄅約けいやくと、授さづけられたる律法おきてと、禮拜れいはいと、もろもろの約束やくそくとあり。 5 先祖せんぞたちも彼かれ等らのものなり、肉󠄁にくによれば、キリストも彼かれ等らより出いで給たまひたり。[*]キリストは萬物ばんもつの上うへにあり、永遠󠄄とこしへに讃ほむべき神かみなり、アァメン。[*或は「萬物の上に在す神は永遠󠄄に讃むベきかな」と譯す。] 6 それ神かみの言ことばは廢すたりたるに非あらず。イスラエルより出いづる者ものみなイスラエルなるに非あらず。〘230㌻〙 7 また彼かれ等らはアブラハムの裔すゑなればとて皆みなその子こたるに非あらず『イサクより出いづる者ものは、なんぢの裔すゑと稱󠄄となへらるべし』とあり。 8 即すなはち肉󠄁にくの子こらは神かみの子こらにあらず、ただ約束やくそくの子こ等らのみ其その裔すゑと認󠄃みとめらるるなり。 9 約束やくそくの御言みことばは是これなり、曰いはく『時ときふたたび巡󠄃めぐり來きたらば、我われきたりてサラに男子なんしあらん』と。 10 然しかのみならず、レベカも我われらの先祖せんぞイサク一人ひとりによりて孕みごもりたる時とき、 11 その子こいまだ生うまれず、善ぜんも惡あくもなさぬ間うちに、神かみの選󠄄えらびの御旨みむねは動うごかず、 12 行爲おこなひによらで召めす者ものによらん爲ために『兄あには次󠄄弟おとうとに事つかふべし』と、レベカに宣のたまへり。
 317㌻ 
13 『われヤコブを愛あいしエサウを憎にくめり』と錄しるされたる如ごとし。

14 然さらば何なにをか言いはん、神かみには不義ふぎあるか。決けっして然しからず。 15 モーセに言いひ給たまふ『われ憐あはれまんとする者ものをあはれみ、慈悲じひを施ほどこさんとする者ものに慈悲じひを施ほどこすべし』と。 16 されば欲ほっする者ものにも由よらず、走はしる者ものにも由よらず、ただ憐あはれみたまふ神かみに由よるなり。 17 パロにつきて聖󠄃書せいしょに言いひ給たまふ『わが汝なんぢを起󠄃おこしたるは此この爲ためなり、即すなはち我わが能力ちからを汝なんぢによりて顯あらはし、且かつわが名なの全󠄃世界ぜんせかいに傳つたへられん爲ためなり』と。 18 されば神かみはその憐あはれまんと欲ほっする者ものを憐あはれみ、その頑󠄂固かたくなにせんと欲ほっする者ものを頑󠄂固かたくなにし給たまふなり。

19 然さらば汝なんぢあるいは我われに言いはん『神かみなんぞなほ人ひとを咎とがめ給たまふか、誰たれかその御定みさだめに悖もとる者ものあらん』 20 ああ人ひとよ、なんぢ誰たれなれば神かみに言いひ逆󠄃さからふか、造󠄃つくられしもの、造󠄃つくりたる者ものに對むかひて『なんぢ何なにぞ我われを斯かく造󠄃つくりし』と言いふべきか。 21 陶工すゑつくりは同おなじ土塊つちくれをもて此これを貴たふときに用もちふる器うつはとし、彼かれを賤いやしきに用もちふる器うつはとするの權けんなからんや。 22 もし神かみ、怒いかりをあらはし權力ちからを示しめさんと思おぼしつつも、なほ大おほいなる寛容くわんようをもて、滅亡ほろびに備そなはれる怒いかりの器うつはを忍󠄄しのび、 23 また光榮くわうえいのために預あらかじめ備そなへ給たまひし憐憫あはれみの器うつはに對むかひて、その榮光えいくわうの富とみを示しめさんとし給たまひしならば如何いかに。 24 この憐憫あはれみの器うつはは我等われらにしてユダヤ人びとの中うちよりのみならず、異邦󠄆人いはうじんの中うちよりも召めし給たまひしものなり。 25 ホゼヤの書ふみに 『我われわが民たみたらざる者ものを我わが民たみと呼よび、 愛あいせられざる者ものを愛あいせらるる者ものと呼よばん、 26 「なんぢら我わが民たみにあらず」と言いひし處ところにて、 彼かれらは活いける神かみの子こと呼よばるべし』と宣のたまへる如ごとし。
 318㌻ 
27 イザヤもイスラエルに就つきて叫さけべり『イスラエルの子孫しそんの數󠄄かずは海うみの砂すなのごとくなりとも救すくはるるは、ただ殘のこりの者もののみならん。〘231㌻〙 28 主しゅ、地ちの上うへに御言みことばをなし了をへ、これを遂󠄅とげ、これを速󠄃すみやかにし給たまはん』 29 また 『萬軍ばんぐんの主しゅ、われらに裔すゑを遺󠄃のこし給たまはずば、 我等われらソドムの如ごとくになり、ゴモラと等ひとしかりしならん』とイザヤの預言よげんせしが如ごとし。 30 然さらば何なにをか言いはん、義ぎを追󠄃おひ求もとめざりし異邦󠄆人いはうじんは義ぎを得えたり、即すなはち信仰しんかうによる義ぎなり。 31 イスラエルは義ぎの律法おきてを追󠄃おひ求もとめたれど、その律法おきてに到いたらざりき。 32 何なにの故ゆゑか、かれらは信仰しんかうによらず、行爲おこなひによりて追󠄃おひ求もとめたる故ゆゑなり。彼かれらは躓つまづく石いしに躓つまづきたり。 33 錄しるして 『視みよ、我われつまづく石いし、礙さまたぐる岩いはをシオンに置おく、 之これに依賴よりたのむ者ものは辱はづかしめられじ』とあるが如ごとし。

第10章

1 兄弟きゃうだいよ、わが心こゝろのねがひ、神かみに對たいする祈いのりは、彼かれらの救すくはれんことなり。 2 われ彼かれらが神かみのために熱心ねっしんなることを證あかしす、されど其その熱心ねっしんは知識ちしきによらざるなり。 3 それは神かみの義ぎを知しらず、己おのれの義ぎを立たてんとして、神かみの義ぎに服󠄃したがはざればなり。 4 キリストは凡すべて信しんずる者ものの義ぎとせられん爲ために律法おきての終󠄃をはりとなり給たまへり。 5 モーセは、律法おきてによる義ぎをおこなふ人ひとは之これによりて生いくべしと錄しるしたり。 6 然されど信仰しんかうによる義ぎは斯かくいふ『なんぢ心こゝろに「誰たれか天てんに昇のぼらん」と言いふなかれ』と。 7 これキリストを引下ひきおろさんとするなり『また「たれか底そこなき所󠄃ところに下くだらん」と言いふなかれ』と。是これキリストを死人しにんの中うちより引上ひきあげんとするなり。 8 さらば何なにと言いふか『御言みことばは、なんぢに近󠄃ちかし、なんぢの口くちにあり、汝なんぢの心こゝろにあり』と。これ我われらが宣のぶる信仰しんかうの言ことばなり。 9 即すなはち、なんぢ口くちにてイエスを主しゅと言いひあらはし、心こゝろにて神かみの之これを死人しにんの中うちより甦よみがへらせ給たまひしことを信しんぜば、救すくはるべし。
 319㌻ 
10 それ人ひとは心こゝろに信しんじて義ぎとせられ、口くちに言いひあらはして救すくはるるなり。 11 聖󠄃書せいしょにいふ『すべて彼かれを信しんずる者ものは辱はづかしめられじ』と。 12 ユダヤ人びととギリシヤ人びととの區別わかちなし、同一どういつの主しゅは萬民ばんみんの主しゅにましまして、凡すべて呼よび求もとむる者ものに對たいして豐ゆたかなり。 13 『すべて主しゅの御名みなを呼よび求もとむる者ものは救すくはるべし』とあればなり。 14 然されど未いまだ信しんぜぬ者ものを爭いかで呼よび求もとむることをせん、未いまだ聽きかぬ者ものを爭いかで信しんずることをせん、宣傳のべつたふる者ものなくば爭いかで聽きくことをせん。〘232㌻〙 15 遣󠄃つかはされずば爭いかで宣傳のべつたふることを爲せん『ああ美うるわしきかな、善よき事ことを吿つぐる者ものの足あしよ』と錄しるされたる如ごとし。

16 然されど、みな福音󠄃ふくいんに從したがひしにはあらず、イザヤいふ『主しゅよ、われらに聞ききたる言ことを誰たれか信しんぜし』 17 斯かく信仰しんかうは聞きくにより、聞きくはキリストの言ことばによる。 18 されど我われいふ、彼かれら聞きこえざりしか、然しからず 『その聲こゑは全󠄃地ぜんちにゆきわたり、 其その言ことばは世界せかいの極はてにまで及およべり』 19 我われまた言いふ、イスラエルは知しらざりしか、先まづモーセ言いふ『われ民たみならぬ者ものをもて汝なんぢらに嫉ねたみを起󠄃おこさせ、愚おろかなる民たみをもて汝なんぢらを怒いからせん』 20 またイザヤ憚はゞからずして言いふ 『我われを求もとめざる者ものに、われ見出みいだされ、 我われを尋󠄃たづねざる者ものに我われあらはれたり』 21 更󠄃さらにイスラエルに就つきては『われ服󠄃したがはずして言いひさからふ民たみに終󠄃日ひねもす手てを伸のべたり』と云いへり。

第11章

1 然されば我われいふ、神かみはその民たみを棄すて給たまひしか。決けっして然しからず。我われもイスラエル人びとにしてアブラハムの裔すゑベニヤミンの族やからの者ものなり。 2 神かみはその預あらかじめ知しり給たまひし民たみを棄すて給たまひしにあらず。汝なんぢらエリヤに就つきて聖󠄃書せいしょに云いへることを知しらぬか、彼かれイスラエルを神かみに訴うったへて言いふ、 3 『主しゅよ、彼かれらは汝なんぢの預言者よげんしゃたちを殺ころし、なんぢの祭壇さいだんを毀こぼち、我われひとり遺󠄃のこりたるに、亦またわが生命いのちをも求もとめんとするなり』と。
 320㌻ 
4 然しかるに御答みこたへは何なにと云いへるか『われバアルに膝ひざを屈かがめぬ者もの、七しち千せん人にんを我わがために遺󠄃のこし置おけり』と。 5 斯かくのごとく今いまもなほ恩惠めぐみの選󠄄えらびによりて遺󠄃のこれる者ものあり。 6 もし恩惠めぐみによるとせば、もはや行爲おこなひによるにあらず。然しからずば恩惠めぐみは、もはや恩惠めぐみたらざるべし。 7 然さらば如何いかに、イスラエルはその求もとむる所󠄃ところを得えず、選󠄄えらばれたる者ものは之これを得えたり、その他ほかの者ものは鈍にぶくせられたり。 8 『神かみは今日こんにちに至いたるまで彼かれらに眠ねむれる心こゝろ、見みえぬ目め、聞きこえぬ耳みゝを與あたへ給たまへり』と錄しるされたるが如ごとし。 9 ダビデも亦またいふ 『かれらの食󠄃卓しょくたくは羂わなとなれ、網󠄄あみとなれ、 躓物つまづきとなれ、報むくいとなれ、 10 その眼めは眩くらみて見みえずなれ、 常つねにその背せを屈かゞめしめ給たまへ』 11 然されば我われいふ、彼かれらの躓つまづきしは倒たふれんが爲ためなりや。決けっして然しからず、反かへつて其その落度おちどによりて救すくひは異邦󠄆人いはうじんに及およべり、これイスラエルを勵はげまさん爲ためなり。 12 もし彼かれらの落度おちど、世よの富とみとなり、その衰󠄄微おとろへ、異邦󠄆人いはうじんの富とみとなりたらんには、况まして彼かれらの數󠄄かず滿みつるに於おいてをや。〘233㌻〙

13 われ異邦󠄆人いはうじんなる汝なんぢ等らにいふ、我われは異邦󠄆人いはうじんの使󠄃徒しとたるによりて己おのが職つとめを重おもんず。 14 これ或あるひは我わが骨肉󠄁こつにくの者ものを勵はげまし、その中うちの幾許いくばくかを救すくはん爲ためなり。 15 もし彼かれらの棄すてらるること世よの平󠄃和へいわとなりたらんには、其その受うけ納󠄃いれらるるは、死人しにんの中うちより活いくると等ひとしからずや。 16 もし初穗はつほの粉󠄃こな潔󠄄きよくば、パンの團塊かたまりも潔󠄄きよく、樹きの根ね潔󠄄きよくば、その枝えだも潔󠄄きよからん。 17 若もしオリブの幾許いくばくの枝えだきり落おとされて、野ののオリブなる汝なんぢその中うちに接つがれ、共ともにその樹きの液汁うるほひある根ねに與あづからば、 18 かの枝えだに對むかひて誇ほこるな、たとひ誇ほこるとも汝なんぢは根ねを支󠄂さゝへず、根ねは反かへつて汝なんぢを支󠄂さゝふるなり。 19 なんぢ或あるひは言いはん『枝えだの折をられしは我わが接つがれん爲ためなり』と。
 321㌻ 
20 實げに然しかり、彼かれらは不ふ信しんによりて折をられ、汝なんぢは信仰しんかうによりて立たてるなり、高たかぶりたる思おもひをもたず、反かへつて懼おそれよ。 21 もし神かみ、原もと樹きの枝えだを惜をしみ給たまはざりしならば、汝なんぢをも惜をしみ給たまはじ。 22 神かみの仁慈なさけと、その嚴肅きびしきとを見みよ。嚴肅きびしきは倒たふれし者ものにあり、仁慈なさけはその仁慈なさけに止とゞまる汝なんぢにあり、若もしその仁慈なさけに止とゞまらずば、汝なんぢも切きり取とらるべし。 23 彼かれらも若もし不ふ信しんに止とゞまらずば、接つがるることあらん、神かみは再ふたゝび彼かれらを接つぎ得給えたまふなり。 24 なんぢ生來せいらいの野ののオリブより切きり取とられ、その生來せいらいに悖もとりて善よきオリブに接つがれたらんには、况まして原もと樹きのままなる枝えだは己おのがオリブに接つがれざらんや。

25 兄弟きゃうだいよ、われ汝なんぢらが自己みづからを聰さとしとする事ことなからん爲ために、この奧義おくぎを知しらざるを欲ほっせず、即すなはち幾許いくばくのイスラエルの鈍にぶくなれるは、異邦󠄆人いはうじんの入いり來きたりて數󠄄かず滿みつるに及およぶ時ときまでなり。 26 斯かくしてイスラエルは悉ことごとく救すくはれん。錄しるして 『救すくふ者ものシオンより出いで來きたりて、 ヤコブより不虔ふけんを取とり除のぞかん、 27 我われその罪つみを除のぞくときに彼かれらに立たつる我わが契󠄅約けいやくは是これなり』とあるが如ごとし。 28 福音󠄃ふくいんにつきて云いへば、汝なんぢ等らのために彼かれらは敵てきとせられ、選󠄄えらびにつきて云いへば、先祖せんぞたちの爲ために彼かれらは愛あいせらるるなり。 29 それ神かみの賜物たまものと召めしとは變かはることなし。 30 汝なんぢら前󠄃さきには神かみに從したがはざりしが、今いまは彼かれらの不順ふじゅんによりて憐あはれまれたる如ごとく、 31 彼かれらも汝なんぢらの受うくる憐憫あはれみによりて憐あはれまれん爲ために今いまは從したがはざるなり。 32 神かみは凡すべての人ひとを憐あはれまんために凡すべての人ひとを不順ふじゅんの中うちに取籠とりこめ給たまひたり。〘234㌻〙 33 ああ神かみの智慧󠄄ちゑと知識ちしきとの富とみは深ふかいかな、その審判󠄄さばきは測はかり難がたく、その途󠄃みちは尋󠄃たづね難かたし。 34 『たれか主しゅの心こゝろを知しりし、誰たれかその議士はかりびととなりし。 35 たれか先まづ主しゅに與あたへて其その報むくいを受うけんや』
 322㌻ 
36 これ凡すべての物ものは神かみより出いで神かみによりて成󠄃なり、神かみに歸きすればなり、榮光えいくわうとこしへに神かみにあれ。アァメン。

第12章

1 されば兄弟きゃうだいよ、われ神かみのもろもろの慈悲じひによりて汝なんぢらに勸󠄂すゝむ、己おのが身みを神かみの悅よろこびたまふ潔󠄄きよき活いける供物そなへものとして獻さゝげよ、これ靈れいの祭まつりなり。 2 又󠄂またこの世よに效ならふな、神かみの御意みこゝろの善ぜんにして悅よろこぶべく、かつ全󠄃まったきことを辨わきまへ知しらんために心こゝろを更󠄃かへて新あらたにせよ。

3 われ與あたへられし恩惠めぐみによりて、汝なんぢ等らおのおのに吿つぐ、思おもふべき所󠄃ところを超こえて自己みづからを高たかしとすな。神かみのおのおのに分󠄃わかち給たまひし信仰しんかうの量はかりにしたがひ愼つゝしみて思おもふべし。 4 人ひとは一ひとつ體からだにおほくの肢えだあれども、凡すべての肢えだその運󠄃用はたらきを同おなじうせぬ如ごとく、 5 我われらも多おほくあれど、キリストに在ありて一ひとつ體からだにして各人おのおのたがひに肢えだたるなり。 6 われらが有󠄃もてる賜物たまものはおのおの與あたへられし恩惠めぐみによりて異ことなる故ゆゑに、或あるひは預言よげんあらば信仰しんかうの量はかりにしたがひて預言よげんをなし、 7 或あるひは務つとめあらば務つとめをなし、或あるひは敎をしへをなす者ものは敎をしへをなし、 8 或あるひは勸󠄂すゝめをなす者ものは勸󠄂すゝめをなし、施ほどこす者ものはをしみなく施ほどこし、治をさむる者ものは心こゝろを盡つくして治をさめ、憐憫あはれみをなす者ものは喜よろこびて憐憫あはれみをなすべし。 9 愛あいには虛僞いつはりあらざれ、惡あくはにくみ、善ぜんはしたしみ、 10 兄弟きゃうだいの愛あいをもて互たがひに愛いつくしみ、禮儀れいぎをもて相あひ讓ゆずり、 11 勤つとめて怠おこたらず、心こゝろを熱あつくし、主しゅにつかへ、 12 望󠄇のぞみて喜よろこび、患難なやみにたへ、祈いのりを恆つねにし、 13 聖󠄃徒せいとの缺乏とぼしきを賑にぎはし、旅󠄃人たびびとを懇ねんごろに待もてなせ、 14 汝なんぢらを責せむる者ものを祝しくし、これを祝しくして詛のろふな。
 323㌻ 
15 喜よろこぶ者ものと共ともによろこび、泣なく者ものと共ともになけ。 16 相あひ互たがひに心こゝろを同おなじうし、高たかぶりたる思おもひをなさず、反かへつて卑ひくきに附つけ。なんぢら己おのれを聰さとしと爲すな。 17 惡あくをもて惡あくに報むくいず、凡すべての人ひとのまへに善よからんことを圖󠄃はかり、 18 汝なんぢらの爲なし得うるかぎり力つとめて凡すべての人ひとと相あひ和やはらげ。 19 愛あいする者ものよ、自みづから復讐ふくしうすな、ただ[*]神かみの怒いかりに任まかせまつれ。錄しるして『主しゅいひ給たまふ、復讐ふくしうするは我われにあり我われこれに報むくいん』とあり。[*或は「その怒るに任せよ」と譯す。] 20 『もし汝なんぢの仇あた飢󠄄うゑなば之これに食󠄃くはせ、渇かわかば之これに飮のませよ、なんぢ斯かくするは熱あつき火ひを彼かれの頭かうべに積つむなり』 21 惡あくに勝󠄃かたるることなく、善ぜんをもて惡あくに勝󠄃かて。〘235㌻〙

第13章

1 凡すべての人ひと、上うへにある權威󠄂けんゐに服󠄃したがふべし。そは神かみによらぬ權威󠄂けんゐなく、あらゆる權威󠄂けんゐは神かみによりて立たてらる。 2 この故ゆゑに權威󠄂けんゐにさからふ者ものは神かみの定さだめに悖もとるなり、悖もとる者ものは自みづからその審判󠄄さばきを招まねかん。 3 長をさたる者ものは善よき業わざの懼おそれにあらず、惡あしき業わざの懼おそれなり、なんぢ權威󠄂けんゐを懼おそれざらんとするか、善ぜんをなせ、然さらば彼かれより譽ほまれを得えん。 4 かれは汝なんぢを益えきせんための神かみの役者えきしゃなり。然されど惡あくをなさば懼おそれよ、彼かれは徒いたづらに劍つるぎをおびず、神かみの役者えきしゃにして惡あくをなす者ものに怒いかりをもて報むくゆるなり。 5 然されば服󠄃したがはざるべからず、啻たゞに怒いかりの爲ためのみならず、良心りゃうしんのためなり。 6 また之これがために汝なんぢら貢みつぎを納󠄃をさむ、彼かれらは神かみの仕人つかへびとにして此この職つとめに勵はげむなり。 7 汝なんぢ等らその負󠄅債おひめをおのおのに償つくのへ、貢みつぎを受うくべき者ものに貢みつぎををさめ、税ぜいを受うくべき者ものに税ぜいををさめ、畏おそるべき者ものをおそれ、尊󠄅たふとぶべき者ものをたふとべ。

8 汝なんぢ等らたがひに愛あいを負󠄅おふのほか何なにをも人ひとに負󠄅おふな。人ひとを愛あいする者ものは律法おきてを全󠄃まったうするなり。 9 それ『姦淫かんいんする勿なかれ、殺ころすなかれ、盜ぬすむなかれ、貪むさぼるなかれ』と云いへるこの他ほかなほ誡命いましめありとも『おのれの如ごとく隣となりを愛あいすべし』といふ言ことばの中うちにみな籠こもるなり。
 324㌻ 
10 愛あいは隣となりを害󠄅そこなはず、この故ゆゑに愛あいは律法おきての完全󠄃まったきなり。

11 なんぢら時ときを知しる故ゆゑに、いよいよ然しかなすべし。今いまは眠ねむりより覺さむべき時ときなり。始はじめて信しんぜし時ときよりも今いまは我われらの救すくひ近󠄃ちかければなり。 12 夜よふけて日ひ近󠄃ちかづきぬ、然されば我われら暗󠄃黑くらきの業わざをすてて光明ひかりの甲よろひを著きるべし。 13 晝ひるのごとく正たゞしく步あゆみて宴樂えんらく・醉酒すゐしゅに、淫樂いんらく・好色かうしょくに、爭鬪あらそひ・嫉妬ねたみに步あゆむべきに非あらず。 14 ただ汝なんぢら主しゅイエス・キリストを衣きよ、肉󠄁にくの慾よくのために備そなへすな。

第14章

1 なんぢら信仰しんかうの弱󠄃よわき者ものを容いれよ、その思おもふところを詰なじるな。 2 或ある人ひとは凡すべての物ものを食󠄃くらふを可よしと信しんじ、弱󠄃よわき人ひとはただ野菜󠄄やさいを食󠄃くらふ。 3 食󠄃くらふ者ものは食󠄃くらはぬ者ものを蔑なみすべからず、食󠄃くらはぬ者ものは食󠄃くらふ者ものを審さばくべからず、神かみは彼かれを容いれ給たまへばなり。 4 なんぢ如何いかなる者ものなれば、他人たにんの僕しもべを審さばくか、彼かれが立たつも倒たふるるも其その主人しゅじんに由よれり。彼かれは必かならず立たてられん、主しゅは能よく之これを立たたせ給たまふべし。 5 或ある人ひとは此この日ひを彼かの日ひに勝󠄃まさると思おもひ、或ある人ひとは凡すべての日ひを等ひとしとおもふ、各人おのおのおのが心こゝろの中うちに確かたく定さだむべし。 6 日ひを重おもんずる者ものは主しゅのために之これを重おもんず。食󠄃くらふ者ものは主しゅのために食󠄃くらふ、これ神かみに感謝󠄃かんしゃすればなり。食󠄃くらはぬ者ものも主しゅのために食󠄃くらはず、かつ神かみに感謝󠄃かんしゃするなり。〘236㌻〙 7 我等われらのうち己おのれのために生いける者ものなく、己おのれのために死しぬる者ものなし。 8 われら生いくるも主しゅのために生いき、死しぬるも主しゅのために死しぬ。然されば生いくるも死しぬるも我われらは主しゅの有󠄃ものなり。 9 それキリストの死しにて復また生いき給たまひしは、死しにたる者ものと生いける者ものとの主しゅとならん爲ためなり。 10 なんぢ何なにぞその兄弟きゃうだいを審さばくか、汝なんぢなんぞ其その兄弟きゃうだいを蔑なみするか、我等われらはみな神かみの審判󠄄さばきの座ざの前󠄃まへに立たつべし。
 325㌻ 
11 錄しるして 『主しゅいひ給たまふ、我われは生いくるなり、 凡すべての膝ひざは、わが前󠄃まへに屈かゞみ、 凡すべての舌したは、神かみを讃ほめ稱󠄄たゝへん』とあり。 12 我等われらおのおの神かみのまへに己おのれの事ことを陳のぶべし。

13 然されば今いまより後のち、われら互たがひに審さばくべからず、寧むしろ兄弟きゃうだいのまへに妨碍さまたげまたは躓物つまづきを置おかぬように心こゝろを決さだめよ。 14 われ如何いかなる物ものも自みづから潔󠄄きよからぬ事ことなきを主しゅイエスに在ありて知しり、かつ確かたく信しんず。ただ潔󠄄きよからずと思おもふ人ひとにのみ潔󠄄きよからぬなり。 15 もし食󠄃物しょくもつによりて兄弟きゃうだいを憂うれひしめば、汝なんぢは愛あいによりて步あゆまざるなり、キリストの代かわりて死しに給たまひし人ひとを汝なんぢの食󠄃物しょくもつによりて亡ほろぼすな。 16 汝なんぢらの善よきことの譏󠄃そしられぬやうに爲せよ。 17 それ神かみの國くには飮食󠄃いんしょくにあらず、義ぎと平󠄃和へいわと聖󠄃せい靈れいによれる歡喜よろこびとに在あるなり。 18 斯かくしてキリストに事つかふる者ものは神かみに悅よろこばれ、人々ひとびとに善よしと爲せらるるなり。 19 然されば我われら平󠄃和へいわのことと互たがひに德とくを建󠄄たつる事こととを追󠄃おひ求もとむべし。 20 なんぢ食󠄃物しょくもつのために神かみの御業みわざを毀こぼつな。凡すべての物ものは潔󠄄きよし、されど之これを食󠄃くらひて人ひとを躓つまづかする者ものには惡あくとならん。 21 肉󠄁にくを食󠄃くらはず、葡萄酒ぶだうしゅを飮のまず、その他ほかなんぢの兄弟きゃうだいを躓つまづかする事ことをせぬは善よし。 22 なんぢの有󠄃もてる信仰しんかうを己おのれみづから神かみの前󠄃まへに保たもて。善よしとする所󠄃ところにつきて自みづから咎とがめなき者ものは幸福さいはひなり。 23 疑うたがひつつ食󠄃くらふ者ものは罪つみせらる。これ信仰しんかうによらぬ故ゆゑなり、凡すべて信仰しんかうによらぬ事ことは罪つみなり。

第15章

1 われら强つよき者ものはおのれを喜よろこばせずして、力ちからなき者ものの弱󠄃よわきを負󠄅おふべし。 2 おのおの隣となり人ひとの德とくを建󠄄たてん爲ために、その益えきを圖󠄃はかりて、之これを喜よろこばすべし。 3 キリストだに己おのれを喜よろこばせ給たまはざりき。錄しるして『なんぢを謗そしる者ものの謗そしりは我われに及およべり』とあるが如ごとし。
 326㌻ 
4 夙はやくより錄しるされたる所󠄃ところは、みな我われらの敎訓をしへのために錄しるししものにして聖󠄃書せいしょの忍󠄄耐にんたいと慰安なぐさめとによりて希望󠄇のぞみを保たもたせんとてなり。 5 願ねがはくは忍󠄄耐にんたいと慰安なぐさめとの神かみ、なんぢらをしてキリスト・イエスに效ならひ、互たがひに思おもひを同おなじうせしめ給たまはん事ことを。〘237㌻〙 6 これ汝なんぢらが心こゝろを一ひとつにし口くちを一ひとつにして我われらの主しゅイエス・キリストの父󠄃ちちなる神かみを崇あがめん爲ためなり。

7 此この故ゆゑにキリスト汝なんぢらを容いれ給たまひしごとく、汝なんぢらも互たがひに相あひ容いれて神かみの榮光えいくわうを彰あらはすべし。 8 われ言いふ、キリストは神かみの眞󠄃理まことのために割󠄅禮かつれいの役者えきしゃとなり給たまへり。これ先祖せんぞたちの蒙かうむりし約束やくそくを堅かたうし給たまはん爲ため、 9 また異邦󠄆人いはうじんも憐憫あはれみによりて神かみを崇あがめんためなり。錄しるして 『この故ゆゑに、われ異邦󠄆人いはうじんの中うちにて汝なんぢを讃ほめたたへ、 又󠄂またなんぢの名なを謳うたはん』とあるが如ごとし。 10 また曰いはく 『異邦󠄆人いはうじんよ、主しゅの民たみとともに喜よろこべ』 11 又󠄂またいはく 『もろもろの國人くにびとよ、主しゅを讃ほめ奉まつれ、 もろもろの民たみよ、主しゅを稱󠄄たゝへ奉まつれ』 12 又󠄂またイザヤ言いふ 『エツサイの萌薛ひこばえ生しゃうじ、 異邦󠄆人いはうじんを治をさむる者もの、興おこらん。 異邦󠄆人いはうじんは彼かれに望󠄇のぞみをおかん』 13 願ねがはくは希望󠄇のぞみの神かみ、信仰しんかうより出いづる凡すべての喜悅よろこびと平󠄃安へいあんとを汝なんぢらに滿みたしめ、聖󠄃せい靈れいの能力ちからによりて希望󠄇のぞみを豐ゆたかならしめ給たまはんことを。

14 わが兄弟きゃうだいよ、われは汝なんぢらが自みづから善ぜんに滿みち、もろもろの知識ちしきに滿みちて互たがひに訓戒くんかいし得うることを確かたく信しんず。 15 然されど我われなほ汝なんぢらに憶おもひ出いださせん爲ために、ここかしこ少すこしく憚はゞからずして書かきたる所󠄃ところあり、これ神かみの我われに賜たまひたる恩惠めぐみに因よる。 16 即すなはち異邦󠄆人いはうじんのためにキリスト・イエスの仕人つかへびととなり、神かみの福音󠄃ふくいんにつきて祭司さいしの職つとめをなす。これ異邦󠄆人いはうじんの聖󠄃せい靈れいによりて潔󠄄きよめられ、御心みこゝろに適󠄄かなふ獻物さゝげものとならん爲ためなり。 17 然されば、われ神かみの事ことにつきては、キリスト・イエスによりて誇ほこる所󠄃ところあり。
 327㌻ 
18 我われはキリストの異邦󠄆人いはうじんを服󠄃したがはせん爲ために我われを用もちひて言ことばと業わざと、 19 また徴しるしと不思議ふしぎとの能力ちから、および聖󠄃せい靈れいの能力ちからにて働はたらき給たまひし事ことのほかは敢あへて語かたらず、エルサレムよりイルリコの地方ちはうに到いたるまで徧あまねくキリストの福音󠄃ふくいんを充みたせり。 20 我われは努つとめて他人たにんの置すゑたる基礎もといのうへに建󠄄たてじとて未いまだキリストの御名みなの稱󠄄となへられぬ所󠄃ところにのみ福音󠄃ふくいんを宣傳󠄂のべつたへたり。 21 錄しるして 『未いまだ彼かれのことを傳つたへられざりし者ものは見み、 いまだ聞きかざりし者ものは悟さとるべし』とあるが如ごとし。〘238㌻〙

22 この故ゆゑに、われ汝なんぢらに往󠄃ゆかんと爲せしが、しばしば妨さまたげられたり。 23 然されど今いまは此この地方ちはうに働はたらくべき處ところなく、且かつなんぢらに往󠄃ゆかんことを多年たねん、切せつに望󠄇のぞみゐたれば、 24 イスパニヤに赴おもむかんとき立寄たちよりて汝なんぢらを見み、ほぼ意こゝろに滿みつるを得えてのち汝なんぢらに送󠄃おくられんとを望󠄇のぞむなり。 25 されど今いま、聖󠄃徒せいとに事つかへん爲ためにエルサレムに往󠄃ゆかんとす。 26 マケドニアとアカヤとの人々ひとびとはエルサレムに在ある聖󠄃徒せいとの貧󠄃まづしき者ものに幾許いくばくかの施與ほどこしをするを善よしとせり。 27 實げに之これを善よしとせり、また聖󠄃徒せいとに對たいして斯かくする負󠄅債おひめあり。異邦󠄆人いはうじんもし彼かれらの靈れいの物ものに與あづかりたらんには、肉󠄁にくの物ものをもて彼かれらに事つかふべきなり。 28 されば此この事ことを成󠄃なし了をへ、この果みを付わたしてのち、汝なんぢらを歷へてイスパニヤに往󠄃ゆかん。 29 われ汝なんぢらに到いたるときは、キリストの滿みち足たれる祝福しくふくをもて到いたらんことを知しる。

30 兄弟きゃうだいよ、我われらの主しゅイエス・キリストにより、また御靈みたまの愛あいによりて汝なんぢらに勸󠄂すゝむ、なんぢらの祈いのりのうちに、我われとともに力ちからを盡つくして我わがために神かみに祈いのれ。 31 これユダヤにをる從したがはぬ者ものの中うちより我わが救すくはれ、又󠄂またエルサレムに對たいする我わが務つとめの聖󠄃徒せいとの心こゝろに適󠄄かなひ、
 328㌻ 
32 かつ神かみの御意みこゝろにより、歡喜よろこびをもて汝なんぢ等らにいたり、共ともに安やすんぜん爲ためなり。 33 願ねがはくは平󠄃和へいわの神かみなんぢら衆すべてと偕ともに在いまさんことを、アァメン。

第16章

1 我われケンクレヤの敎會けうくわいの執事しつじなる我われらの姉妹しまいフィベを汝なんぢらに薦すゝむ。 2 なんぢら主しゅに在ありて聖󠄃徒せいとたるに相應ふさはしく、彼かれを容いれ、何なににても其その要󠄃えうする所󠄃ところを助たすけよ、彼かれは夙はやくより多おほくの人ひとの保護者ほごしゃまた我わが保護者ほごしゃたり。

3 プリスカとアクラとに安否あんぴを問とへ、彼かれらはキリスト・イエスに在ある我わが同勞者どうらうしゃにして、 4 わが生命いのちのために己おのれの首くびをも惜をしまざりき。彼かれらに感謝󠄃かんしゃするは、ただ我われのみならず、異邦󠄆人いはうじんの諸しょ敎會けうくわいもまた然しかり。 5 又󠄂またその家いへにある敎會けうくわいにも安否あんぴを問とへ。又󠄂またわが愛あいするエパネトに安否あんぴを問とへ。彼かれはアジヤにて結むすべるキリストの初はじめの實みなり。 6 汝なんぢ等らのために甚いたく勞らうせしマリヤに安否あんぴを問とへ。 7 我われとともに囚人めしうどたりし我わが同族どうぞくアンデロニコとユニアスとに安否あんぴを問とへ、彼かれらは使󠄃徒しとたちの中うちに名聲きこえあり、かつ我われに先さきだちてキリストに歸きせし者ものなり。 8 主しゅにありて我わが愛あいするアンプリヤに安否あんぴを問とへ。 9 キリストにある我われらの同勞者どうらうしゃウルパノと我わが愛あいするスタキスとに安否あんぴを問とへ。 10 キリストに在ありて鍊達󠄃れんたつせるアペレに安否あんぴを問とへ。アリストブロの家いへの者ものに安否あんぴを問とへ。〘239㌻〙 11 わが同族どうぞくヘロデオンに安否あんぴを問とへ。ナルキソの家いへなる主しゅに在ある者ものに安否あんぴを問とへ。 12 主しゅに在ありて勞らうせしツルパナとツルポサとに安否あんぴを問とへ。主しゅに在ありて甚いたく勞らうせし愛あいするペルシスに安否あんぴを問とへ。 13 主しゅに在ありて選󠄄えらばれたるルポスと其その母はゝとに安否あんぴを問とへ、彼かれの母ははは我われにもまた母ははなり。 14 アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマス及および彼かれらと偕ともに在ある兄弟きゃうだいたちに安否あんぴを問とへ。
 329㌻ 
15 ピロロゴ及およびユリヤ、ネレオ及およびその姉妹しまい、またオルンパ及および彼かれらと偕ともに在ある凡すべての聖󠄃徒せいとに安否あんぴを問とへ。 16 潔󠄄きよき接吻くちつけをもて互たがひに安否あんぴを問とへ。キリストの諸しょ敎會けうくわいみな汝なんぢらに安否あんぴを問とふ。

17 兄弟きゃうだいよ、われ汝なんぢらに勸󠄂すゝむ、おほよそ汝なんぢらの學まなびし敎をしへに背そむきて分󠄃離ぶんりを生しゃうじ、顚躓つまづきをおこす者ものに心こゝろして之これに遠󠄄とほざかれ。 18 斯かゝる者ものは我われらの主しゅキリストに事つかへず、反かへつて己おのが腹はらに事つかへ、また甘あまき言ことばと媚諂こびへつらひとをもて質朴しつぼくなる人ひとの心こゝろを欺あざむくなり。 19 汝なんぢらの從順じゅうじゅんは凡すべての人ひとに聞きこえたれば、我われなんぢらの爲ために喜よろこべり。而しかして我わが欲ほっする所󠄃ところは汝なんぢらが善ぜんに智かしこく、惡あくに疏うとからんことなり。 20 平󠄃和へいわの神かみは速󠄃すみやかにサタンを汝なんぢらの足あしの下したに碎くだき給たまふべし。   願ねがはくは我われらの主しゅイエスの恩惠めぐみ、なんぢらと偕ともに在あらんことを。

21 わが同勞者どうらうしゃテモテ及および我わが同族どうぞくルキオ、ヤソン、ソシパテロ汝なんぢらに安否あんぴを問とふ。 22 この書ふみを書かける我われテルテオも主しゅにありて汝なんぢらに安否あんぴを問とふ。 23 我われと全󠄃ぜん敎會けうくわいとの家主いへあるじガイオ汝なんぢらに安否あんぴを問とふ。町まちの庫司くらづかさエラストと兄弟きゃうだいクワルトと汝なんぢらに安否あんぴを問とふ。 24 [なし][*][*異本二四節に「願くは我らの主イエス・キリストの恩惠汝等すべてと偕にあらん事をアァメン」とありて、二〇節に同義の句を缺く。] 25 願ねがはくは長ながき世よのあひだ隱かくれたれども、 26 今いま顯あらはれて、永遠󠄄とこしへの神かみの命めいにしたがひ、預言者よげんしゃたちの書ふみによりて信仰しんかうの從順じゅうじゅんを得えしめん爲ために、もろもろの國人くにびとに示しめされたる奧義おくぎの默示もくしに循したがへる我わが福音󠄃ふくいんと、イエス・キリストを宣のぶる事こととによりて、汝なんぢらを堅かたうし得うる、 27 唯一ゆゐいつの智かしこき神かみに榮光えいくわう、世々よよ限かぎりなくイエス・キリストに由よりて在あらんことを、アァメン。〘240㌻〙
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